矯正コラム

矯正完了しても歯並びはズレる!その原因と対策

2018年07月11日 (水)

歯科矯正治療の技術はこの10年ほどでかなり進化しました。治療に使う器具は性能が上がっただけでなく、小型化にも成功し患者さんの負担を減らすことができるようになりました。もちろん治療成績もかつてとは比べ物にならないくらい向上しています。

しかしそれでもなお、歯科矯正治療は「完璧」ではありません。
残念ながら「歯科矯正完了後の後戻り」は生じてしまいます。
後戻りとは、歯並びが元のように悪くなってしまう現象です。

これは治療にあたった歯医者の技術の問題というより、患者さんの歯のポテンシャルの影響と考えられます。
ですが後戻りを食い止める方法はあります。

今回は、歯科矯正完了後の後戻りが起きるメカニズムと、後戻りを予防する措置を解説します。

なぜ歯科矯正完了後に後戻りが起きるのか

なぜ歯科矯正完了後に後戻りが起きるのか

歯科矯正完了後の後戻りが起きるメカニズムを解説する前に、歯科矯正治療ではどのようにして歯を動かしているのかみてみましょう。

歯は顎の骨に突き刺さっている状態で生えています。ということは、顎の骨には歯の根っこの部分が入る「穴」があるわけです。
歯科矯正について解説するときよく「歯を動かす」と表現するのですが、これはこれで間違っていないのですが、それと同時に「顎の骨の穴の位置をずらしている」ともいえるのです。

穴の位置をずらすということは、顎の骨を動かしているのと同じです。
歯科矯正は「無理やり」顎の骨を動かす方法なので、矯正が完了してワイヤーやマウスピースを取り外すと、顎の骨は元に戻ろうとします。なぜなら顎の骨にとっては元の位置のほうが「おさまりがよい」からです。

しかし、歯科矯正完了後に後戻りしない患者さんもいます。これは矯正によって移動させた位置こそ、顎の骨にとって正しい位置だったことを意味します。

顎の骨は、顎の関節や頭蓋骨や首の骨と力を与えたり力をもらったりしています。矯正によって力の均衡が図れれば移動した歯はそこにとどまりますし、力の均衡が破られると、移動した歯は戻ろうとしてしまいます。

「保定期間」とは

歯科矯正治療が完了した後、ほとんどの歯医者は「保定期間」を取ります。これは歯医者が、移動した歯が後戻りすることを想定し、後戻り対策を講じる期間です。
それでは次に、歯医者が保定期間に行う、後戻り対策の具体的な方法を紹介します。

リテーナーを装着する

後戻りを防ぐ器具のことを保定装置といい、これも歯に力を加えます。
しかし保定装置が歯に加える力は、「矯正本番」で使うワイヤーやマウスピースが歯に加える力よりはるかに弱いのです。

保定装置の1つにリテーナーがあります。これは金属製の骨組みと樹脂製の歯型プレートで構成され、歯にすっぽり被せて使います。

ではリテーナーはどれくらいの頻度、そしてどれくらいの期間、装着していなければならないのでしょうか。
24時間連続でおよそ1年装着します。

「矯正本番」のワイヤー矯正やマウスピース矯正はいずれも2年くらいかかるので、保定装置を装着する期間と合わせると、歯科矯正治療のスタートから「完全終了」まで3年ほどかかる計算になります。

後戻りが強いとマウスピースを保定装置として使うこともある

後戻りが強いとマウスピースを保定装置として使うこともある

リテーナーは、歯の後戻りを押しとどめる力はそれほど強くありません。そのため、歯の戻ろうとする力が強い場合、リテーナーでは力不足の場合があります。
リテーナーを装着していても定期的に歯科クリニックに通うことになるので、歯医者はすぐに「リテーナーでは力不足」かどうか判断できます。

ではリテーナーを使っても歯の後戻りが進んでしまったらどうしたらいいのでしょうか。
歯医者によってはもう一度ワイヤーをかけることもありますが、ただマウスピースを使うことが多いでしょう。
歯の後戻りを防ぐためのマウスピースは「矯正本番」のときに使うマウスピースより力が弱いタイプですが、リテーナーよりは強い力があるのです。

患者さん自身でも「後戻り予防」ができる

移動した歯の後戻り予防策では、患者さん自身が行えるものもあります。
口呼吸の癖がある人は、鼻呼吸に切り替えましょう。口呼吸が長かった人が鼻呼吸に切り替えると苦しいと感じることがありますが、じきに肺活量があがってくるので慣れてきます。
なぜ鼻呼吸が歯の後戻りの予防になるかというと、唇を閉じるようになるからです。口呼吸の場合、常に口が開いている状態になっています。
口を閉じた状態の唇は、実は前歯をゆっくりじわーっと押しているのです。もちろん強い力ではありませんが、しかし口を閉じている時間が長くなると、弱い力でもしっかりした力になるのです。
唇が前歯を押すとその力は奥歯に向かって進み、最終的にはすべての歯に力が伝わります。この力が後戻りする力を相殺できると、後戻りが生じません。

また、舌で歯の裏側を押す癖がある人は、それをやめると歯の後戻りを防ぐことができます。理想の舌の位置は、口のなかに何も入っていない状態のときに、舌が歯の裏側に触れていない状態です。
しかし食事をしていないときでも舌が歯の裏に接触していると、弱い力でもじわーっと歯を押してしまうのです。唇と同じ効果があるといえます。

まとめ~移動した歯の後戻りは「治療の失敗」ではない

歯科矯正が完了し、きれいな歯並びになったのに、その後で歯が後戻りしてしまうのは、歯医者の失敗ではありません。なぜこのことを強調するのかというと、患者さんが「失敗ではないか」と懸念すると、歯医者との信頼関係が崩れてしまうからです。
なので正確な情報として、移動した歯の後戻りは想定の範囲内ということを覚えておいていただきたいのです。

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