矯正コラム

マウスピース矯正で歯はどれぐらい動く?歯が動くメカニズム

2017年06月11日 (日)

マウスピース矯正という矯正治療があるのをご存知でしょうか?名前の通りマウスピースを装着することによって歯並びが悪い部分の歯を動かしていく治療方法です。しかし、果たしてマウスピースを装着しているだけで本当に歯が動くのでしょうか。今回はどのようにして歯が動くのかメカニズムを見てみましょう。

本当にマウスピースで歯が動くのか

本当にマウスピースで歯が動くのか

先に答えを言えば、歯は動きます。しかしこれは矯正治療用のその人に合ったマウスピースを装着したからなので、歯ぎしり防止のために使っているマウスピースでは歯は動きません。マウスピース矯正で使用するマウスピースは、弱い力を歯にかけて少しずつ歯を動かしていくことを目的に設計されています。

ここで言う弱い力は舌で歯を押すぐらいの力です。マウスピースを装着し始めてしばらくたって歯が少しずつ動いてきたら、その時の口の状態にあったまた別のマウスピースを装着していくという形で治療を続けていきます。移動距離はほんの少しずつなので、一つのマウスピースを約二週間は使用することになるでしょう。

毎日マウスピースを装着することによって歯は動いていきますが、一日24時間マウスピースを装着していればそれだけ早く歯が動くと思ってずっと装着することは避けましょう。時間を短縮しようとして急に歯を動かすと歯の周りの組織が炎症を起こす場合もあります。矯正歯科医に指示された装着時間を守って装着していれば、少しずつ歯は動いて歯並びを良くすることができます。

歯が動くメカニズム

歯が動くことには、歯にかかる力と、歯を支える骨の代謝が関係してきます。また歯と歯を支える骨の間にあるクッションのような膜を歯根膜と言いますが、この歯根膜も大きく関係してきます。実際歯を動かしていくというのは、歯と同時に、目には見えない部分ですが骨の位置も動かしているので生じる変化なのです。

ではどのようにして歯を動かす力によって歯を支える骨も動いていくのか、さらに詳しく見ていきましょう。

●骨吸収と骨形成を繰り返す

歯のある方向に弱い力をかけ続けると、歯は徐々に圧力をかけられた方向に向かって真横に動いていきます。これはまだ歯そのものが動いているだけです。その後、徐々に歯を支える骨の中で骨吸収と骨形成がはじまっていきます。骨が溶かされて少なくなっていくことを骨吸収、その逆で骨を作り出して骨が増えていくことを骨形成と言います。

例えば歯の右側から力をかけると右側の骨は骨形成が進んで、新しい骨が形成されて増えていき、逆に左側の骨は骨吸収が進んで、骨が溶けて少なくなっていきます。それは歯に圧力がかかる時に、歯と骨の間の歯根膜が伸びたり縮んだりして変化が生じるからです。そうした歯根膜の刺激により、歯と骨との間の距離が狭くなれば骨が溶かされてそれまでにはなかったスペースが生まれます。

それと逆に距離が広くなればその間を埋めようとして骨が形成されていきます。こうした骨吸収と骨形成を長期間にわたって繰り返していった結果、もともと歯を支えるために骨にあいていた穴の位置が徐々に変化していくのです。こうして骨にあいていた穴の位置が変化していくので、その骨の上にある歯も確実に動いていき、一度位置が変化すればその後は簡単に歯が元の位置に戻ることもないのです。

この骨形成、また骨吸収についてもう少し詳しく見てみましょう。

●骨形成

右側から歯を押したら右側では骨形成がはじまります。歯が押される前の状態と比べて歯根膜が伸ばされると、骨芽細胞という骨を作り出す細胞が働き始めます。この骨芽細胞は歯根膜と骨の間をうめるように新しい骨を作っていきます。また線維芽細胞という歯根膜の繊維を新しく作り出す細胞も働き始めることにより、引っ張られて苦しい状態だった歯根膜を新しい歯根膜の繊維で満たそうとしていきます。こうして新しい骨と歯根膜の繊維ができていきます。

●骨吸収

右側から歯を押したら左側では骨吸収がはじまります。歯が押される前の状態と比べて歯根膜が押しつけられ、繊維が縮むと、破骨細胞という骨を溶かす細胞が働き始めます。この破骨細胞は歯根膜のまわりにある歯を支える骨を食べていきます。そして骨が溶かされてわずかなスペースが生まれることによって押しつけられていた歯根膜が元のバランスに戻ることができるのです。こうして骨が溶かされていきます。

急激に歯を動かすと?

急激に歯を動かすと?

先ほども触れたように、歯を急激に動かすと歯の周りの組織に炎症がおこる場合があります。それは歯が動くメカニズムの中の骨吸収だけを過度に進ませてしまうからです。矯正治療中は骨吸収だけでなく骨形成も、バランス良く繰り返していかなければいけないのに骨吸収だけが起こると歯を支える骨の状態がボロボロになってしまいます。また骨だけでなく歯そのものにも影響が出る場合もあります。歯根吸収と言って、歯の根が吸収、つまり溶かされて短くなってしまう症状です、歯根吸収してしまうと溶けてしまった歯根を元に戻すことはできません。歯の根が短くなると歯がぐらついて早期に抜けてしまいやすく、痛みも伴います。ですから急に歯を動かそうとして強い力をかけたり、また長時間にわたり力をかけ続けたりするということは決してしないようにしましょう。

歯の移動距離と時間

矯正治療により歯が動く物理的距離は一か月で0.3ミリと言われています。一か月も時間をかけても動くのはたったの0.3ミリと聞くと大して動いていないように感じるかもしれません。しかし口の中での変化はミリ以下の単位でも生じれば大きな変化です。実際は0.3ミリも動かないこともあります。

もし歯並びが悪くて歯を理想の位置にするために4ミリ動かさなければいけないとしたら矯正治療に一年はかかる計算になります。マウスピース矯正は弱い力で歯を動かしていきますが、他の矯正治療と同様に歯を動かしていくことは可能です。

まとめ

歯が動くメカニズムはどの矯正治療でもほぼ変わりありません。マウスピースを装着するだけのマウスピース矯正は簡単な矯正治療に思えるかもしれませんが、マウスピースだけでも歯は動くものです。歯が動くメカニズムはマウスピース矯正にも十分あてはまるので、矯正治療を考える時にはマウスピース矯正という選択肢も忘れずに考慮してみてください。

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